つまり、FRBが主導的役割をはたしたのである。
ところが、二○○七年夏、最初に主導権を握ったのはECBのTリシェ総裁であり、FRBのBーナンキ議長ではなかった。
A氏は、BーナンキFRB議長の指導力に疑念を出している。
同議長は、独自の判断で機敏に危機に対応したのではなく、Gンスパン前議長の腹心であったCーンFRB副議長や、財務次官を務めたことのあるGイトナー・ニューヨーク連銀総裁などの「市場派人脈」に突き動かされたと、O部氏は推測されている。
アメリカのFRBではなく、ヨーロッパのECBが、問題の処理にまず立ち上がったという特徴はきわめて重要である。
アメリカの金融機関は、リスクを世界中に分散させてしまっている。
アメリカ内で生じた危機のすべてをアメリカに本拠を置く金融機関が処理するのではなく、危機発生に備えて、リスクを国際的に分散させているのである。
金融業者にとって都合のいいことに、アジア通貨危機後の世界は、ドルは崩壊しないという神話に取り懸かれていた。
自国の金融商品ではなく、アメリカの金融機関が顧客ごとに仕組んだ金融商品に群がったのである。
アジア通貨危機の後遺症の余波ではあろうが、アメリカの金融革新技術なるものへの神話的あこがれがあったとしか思われない。
そうした諸外国の信奉を利用して、意図していたか否かは不明であるが、結果的には危機発生時の負担を国際的に分散させてしまった。
ヨーロッパが不良債権をもっとも多く押し付けられたのである。
アメリカ発の危機が、今後、世界各地で発火することになり、アメリカ金融当局のだらしない金融政策の尻ぬぐいを世界がしなければならないという事態が頻繁に生じるであろう。
そうして、ドルへの信頼感は、確実に失われていくと思われる。
さらに特徴的なことは、ユーロの強力な地位を国際的に認知させることを狙ったヨーロッパ金融当局の決断である。
この面で、フランス大蔵省国庫局長とフランス中央銀行総裁を歴任したTリシェECB総裁の決断を、フランスのSルコジ大統領がアメリカの格付け会社批判を展開することによって支持したのも、ユーロの地位上昇を狙った政治的なパフォーマンスであったと見なしうる。
今回のサブプライムローンに端を発する金融危機では、本家のアメリカではなく、ヨーロッパで、古典的な銀行の取付け騒ぎが起こった。
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